日本遺産 伊丹酒どころモデルルート①学び編 清酒発祥の地伊丹諸白を学ぶ 英語で日本酒文化を紹介する前の予習にも(2022年11月情報:甘党女性の酒蔵巡り)

さて、前回伊丹市立美術館リニューアルの記事を掲載した大阪伊丹。

今回は、飲み比べを取り入れた巡り方と『灘五郷』と合わせて日本遺産とされた『伊丹諸白』とは?をご紹介します。

本記事は学び編と味わい編に分けてご紹介します。

  • 学び編:全体ルートと見学内容(本記事)
  • 味わい編:日本酒(と併設ブルワリーのビール)飲み比べと試飲・お買い物

前回の伊丹記事はこちらを

日本の清酒発祥の地 伊丹の『伊丹諸白』とは?

伊丹が清酒発祥の地といわれるのは『澄み酒』を作ったから。それまでのお酒は濁っているのが当たり前だったものを、透明な酒にし、『下り酒』(当時はは天皇陛下がいらっしゃるのが京都であったため江戸方面に下ると言いました)として人気を博しました。

その伊丹のお酒は『伊丹諸白(いたみもろはく)』と言われて大切に扱われました。伊丹諸白は『麹米』・『掛け米』共に白、つまり精白米を使っていたことを指します。

それまで麹米に使われていた『玄米』には精白米と比較して雑味が含まれていますが、それを取り去ったものでした。

2020年に日本遺産に認定

この伊丹諸白ですが、誕生から400年後、2020年に日本遺産に認定されました。認定されたのは、灘五郷と合わせて『「伊丹諸白」と「灘の生一本(きいっぽん)」下り酒が生んだ銘醸地 伊丹と灘五郷』です。日本一の酒どころ灘五郷巡りと合わせて伊丹も巡るのが良いようですね。

日本遺産認定の表記

伊丹酒どころモデルルート

伊丹の酒どころはJR伊丹駅からも阪急伊丹駅からも徒歩で行ける場所。大阪伊丹空港からもこの両駅は市バスで向かえる場所となっています。半日以上のトランジット時間があるならおすすめの場所と言えるでしょう。

伊丹の酒どころをコンパクトにみるモデルルートとして以下の3拠点を巡るルートをご紹介します(昼食時間込で3時間ぐらいのルート)。ルート起点はJR伊丹・阪急伊丹のどちらでもよくまた、各駅との往復ルートでも良い場所です。

  • ①見学 市立伊丹ミュージアム・旧岡田屋住宅(敷地続き)
  • ②見学・食事・試飲・買い物 白雪ブルワリービレッジ長寿蔵(見学後味わい編に続きます)
  • ③試飲と買い物 老松酒造

①見学:市立伊丹ミュージアム・旧岡田屋住宅

市立伊丹ミュージアム歴史展示

市立伊丹ミュージアムは人気がありすぎてチケットが取れなかった2022年夏の企画展『ヨシタケシンスケ展かもしれない』など、時期により様々な企画展も行っています。企画展は都度要チェックなのですが、企画展より離れたエリア、2F無料の常設展『歴史展示』では伊丹の酒にまつわる展示物等に少し触れることができるようになっています。

酒造りが盛んだった頃の伊丹郷町

また、伊丹の酒造りは江戸時代近衛家の保護政策により発展しましたが、そのゆかりの品なども見ることができるようになっています。

近衛家御用の品々

酒造り展示(旧岡田家住宅)

元々長屋だった建物に1715年酒蔵を増設して運営されていた旧岡田家住宅。解体後復元されており、市立伊丹ミュージアムから敷地続きで見学ができます。中の写真は前回の訪問記に記載していますので、かなり割愛しますが、映像で、当時の酒造りの様子(漫画的な)や用語の解説映像と伊丹諸白と灘の木一本に関する動画を見ることができるのです。そして、何よりも酒造りの建物自体の大きさや窯場など実物の大きさを体感できる施設となっています。

旧岡田家住宅玄関

ゆかりの酒樽

映像コンテンツ❶ 玄関付近 伊丹諸白と灘の生一本の解説動画

映像コンテンツ 伊丹の澄み酒が作られる様子

釜場跡

ずらりとならぶ和室の様子

②見学 白雪ブルワリービレッジ長寿蔵 英語解説つきで見る昔の酒造り道具

市立伊丹ミュージアムから2区画先のほど近くに、小西酒造さんの白雪ブルワリービレッジ長寿蔵があります。

こちらでは日本酒以外にビールの醸造も行われています。

展示コーナーと日本の有名人

まず、日本酒については、館内2Fに江戸時代の酒文化を説明する展示コーナー(無料)があります。大阪伊丹空港を意識されているのか、英語解説がされているのも特徴的です。

白雪製品

江戸の酒文化伊丹の小西家はスペシャルなクラスの有名人と共にあったようです。

まずは俳人松尾芭蕉が小西家四代目に句を送ったとのこと。夕顔の儚さとその後のコミカルな表現の組み合わせが面白い句ですね。

夕顔や酔うて顔出す窓の穴

松尾芭蕉が小西家四代目に贈った句

松尾芭蕉が贈った句

そして井原西鶴の『津の国隠れ里』にも、伊丹諸白の米を吟味し、繊細な注意で酒造りを行っているところが描かれていました。

井原西鶴

なお、昔の酒造り道具展示は、コンパクトな場所ながら、工程説明と共に順に展示されているため、前後に旧岡田家住宅の映像コンテンツと合わせて見ると理解が深まると思います。

私の関連記事では灘五郷の酒蔵巡りなどにも酒造り道具情報等載っています。

英語解説つきで見る道具展示(もちろん現地では日本語解説もあり)

❶洗い場

まず洗い場は米を洗う場所です。寒い季節の冷たい水で、70・50・30の150回踏洗いをします。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(洗い場)
洗い場道具類

❷蒸米・釜屋

そして、なるほど、英語でスチームドライス。言われてみればそのままかと思う米を蒸す工程です。蒸しあげる大きな甑(こしき)は、道具と見どころの大きなポイントです。そして蒸しあげた米は冷まされます。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(釜屋)

蒸米・釜屋道具類

甑(こしき)

放冷道具

❸麹室

酒造りの蔵に宿るものが生かされるのが『麹室』ですね。

日本酒造りは冬の時期に行われるため、藁などで囲い麹菌が育ちやすい環境を維持しています。種麹(もやし)をふりかけ揉み込み混ぜ合わせて布をかけて麹を育てていきます。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(麹室)
白雪ブルワリービレッジ日本語解説(麹室)
麹室

❹酛仕込み

 眠くて辛い作業と書かれていた酛仕込み。蒸米に麹を加えて『酛』(もと)を作る作業です。美味しいお酒を作り出すペースを合わせるためにかき混ぜる時に歌う歌など作られていました。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(酛場)

酛仕込み道具

❺醪仕込み(もろみしこみ)

参考:仕込み工程の前に、英語解説といえば思い出すのが京都出町柳にある松井酒造さんのオリジナルシャツに書かれていた『Multiple Parallel Fermentation』の文字。日本酒は素材そのものは米から作るため、単発酵ではなく、複合発酵で作るということ。非常に手間をかけてお酒を発酵していくんだなというところです。こちらの解説については松井酒造さん訪問記をご参照ください。

お酒をアルコール発酵していく工程。いよいよ仕込みです。酛を桶に移し、蒸した米と麹・水を加えていく作業です。三段仕込みとよく聞くと思いますが、これは一気に全材料を混ぜ込んでしまうと、雑菌に負けてしまう恐れがあるため、3回に分けて、酒発酵の元となる酵母の数を増やして対抗しながら発酵を進めていく仕込みの工程を指しています。

また、この発酵過程で泡がでてくるのですが、これを一晩中潰す作業等も行われていました。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(仕込み)

白雪ブルワリービレッジ日本語解説(醪仕込み)

仕込み道具

❻搾り

さて、出来上がったどろどろの醪(もろみ)の状態、この状態のままではいわゆる『どぶろく』です。

そして、伊丹は清酒発祥の地。『澄み酒』と呼ばれるお酒を作るため、搾って濾す工程が大切です。

白雪ブルワリービレッジ英語解説(搾り)
白雪ブルワリービレッジ日本語解説(仕込み)

その後は火入れをして樽に詰められ。下り酒として江戸にも伝わる名酒となっていきます。

搾り・火入れ工程道具

びっくり3Dアート

なお、この展示会場には3Dアートが描かれていて絵の中に自分が入ってのびっくり3Dアートが撮影できます。

「あーっ。樽が倒れてくる〜っ。」というイメージで絵の中に入っていくポーズを考えましょう。

3Dアート

3Dアートの撮影の仕方

ちなみに自由に羽織っていい衣装もありました。

白雪の衣装

なんと、ここまで見学編を書いてみて気づいたのは、この見学編に書かれた内容は全て無料見学だということ。

江戸の酒蔵さんも文化発展には非常に寄与されたとのこと。文化を伝えていただいたことに感謝しつつ、次の味わい編に進みたいと思います。(味わい編でご紹介するものは有償ですが。)

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