さて、灘五郷 甘党女性の酒蔵巡りは第一回が、西宮郷で第二回が魚崎郷と御影郷。
次はと来れば西郷か今津郷が来るのが普通かもしれませんが、西宮郷に行った時に見つけたチラシの『しぼりたて新酒を愉しむ会』という表現に心惹かれて、再び西野郷の白鷹さんを訪ねました。2022 年の1月白鷹さんにご縁を感じて西宮郷探索の後、ちょうど伺う予定だった御料酒を奉納されている伊勢神宮の内宮出た後、三宅酒店さんで伊勢限定酒もいただきました。
ご縁を勝手に感じての新酒を愉しむ会の様子をお届けいたします。
白鷹 禄水館は西宮駅を真っ直ぐ海に向かった酒蔵通り
西宮郷巡りでは、阪急今津駅より出発して向かいましたが、目的地が白鷹 禄水館の場合は阪神電車 西宮駅の方が近いです。ただ、蔵見学の時に何度も耳にする『宮水』。
白鷹さんの宮水取水地は録水苑より今津側にありますので、行きは今津駅から向かいます。
地図にある宮水庭園。こちらを見てから蔵見学をした方が理解が深まると思います。
宮水庭園(白鷹 宮水取水地)
宮水とはお酒造りに向いた水。後で白鷹さんの展示見学時に教えていただいたところによると、宮水を発見されたのは灘五郷の一つ、魚崎郷にある櫻正宗さんだとか。
櫻正宗さんは西宮と魚崎2箇所でお酒を造っていたそうですが、同じ配合、同じ手法で造ってもいつも西宮の方が美味しいお酒ができていたそう。
職人さんを入れ替えても、お米を入れ替えても常に西宮の方が良いお酒。そこで、水を入れ替えてみて水に秘訣があることがわかり、それが宮水の発見へと繋がったそう。
宮水は六甲山系のお水が石灰層を通り抜けていつのまにかミネラル分(カルシウムとマグネシウム)が増えるそう。
市販でも有名な六甲の水は軟水らしいのですが、奇跡的にこの地域に流れる時にはお酒に最も向いた硬水に生まれ変わっています。
硬水はカルシウムとマグネシウムが1リットル中120mg含まれていることが定義のようですが、宮水に含まれるのは180mg/ℓ。非常な硬水といわれるものです。
そのため、この宮水庭園には西宮郷にある酒蔵に限らず、灘五郷のほかの地域の酒蔵もお水を取っています。
なお、阪神淡路大震災後に後も奇跡的に同じ品質だったそうです。
『しぼりたて新酒を愉しむ会』会場は白鷹禄水苑宮水ホール
『しぼりたて新酒を愉しむ会』は完全予約制で公式HPで申し込み、料金は振り込み又は白鷹 禄水苑に前もって支払いに来る必要があります。
費用は、日程によって蔵見学ありの日は3700円/人気、蔵見学なしの日は3200円/人です。
予約をしているため、白鷹禄水苑の入り口を入って2階にある宮水ホールに到着すると、あらかじめ用意された座席番号のところに案内されます。第一回目の時に訪れた竹葉亭と蔵BARは同じ建物の1階にあります。
白鷹録水館の入り口に祝日本遺産という樽があったため、後で調べてみると西宮市のHPに灘五郷の銘醸地が日本遺産に選ばれたことが載っていました。
令和2年6月19日、神戸市、西宮市、芦屋市、尼崎市、伊丹市の5市が申請した『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷』が令和2年度の日本遺産に認定されました。「日本酒」をテーマとしたストーリーが認定されたのは初めてです。「日本遺産(Japan Heritage)」は、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。
西宮市HP
まずはVTR視聴と集古館
置かれている案内を見ると、新酒を愉しむ会以外にも芦屋にあるリストランテベリーニや夙川のルベナトンと言ったフレンチ、イタリアンとのコラボイベントや田植え体験など色々なイベントがあるようです。
青色のものは靴カバー 白色のヒダのある白いものは髪カバーで蔵見学時に身につけます。
『今まさに酒造りを行っている蔵』を見せていただけるようです。
座席でまずは短い映像を拝見して、水と米が酒造りの基本であることを学びます。
そして、蔵見学前に、昭和初期までの酒造りの道具類がみられる集古館へ。こちらも前回見学したのですが、前項 宮水庭園のところに記載した宮水発見秘話について話が伺えました。
樽廻船が生まれた理由
また、樽廻船が生まれた経緯についても、なんとも現実的なお話を聞きました。
樽廻船とはお酒を積んで江戸に運んでいた船ですが、樽廻船ができるまでは、船にはお酒以外にも雑多な品を運んでいたそうです。
ただ、その船が運航中の災難にあった時、船を軽くするため、積荷を上から順番に海に捨てていったそう。
お酒は当然重く積み荷の底の方。被害を受けずに運べました。けれどもその損害補填は均等割。酒蔵は自分達の荷物は無事だったのにも関わらず損害を補填せねばならずで、それを避けるために積荷をお酒だけにしよう!として生まれた物が樽廻船らしいです。
白鷹の蔵見学
西宮市は市の条例で酒蔵の大看板が2021年の夏に撤去されてしまっていますが、酒蔵には大きく白鷹の文字が。
神宮御料酒はなぜ外注に変わったのか
蔵に入るとまず伊勢神宮から送られた大きな石碑が迎えてくれます。
白鷹は伊勢神宮に伺った時に樽が多く飾られていたのもみましたが、唯一、御料酒を奉納している酒蔵。御料酒というのは、神様に朝夕、お米や魚、野菜と一緒に捧げるお酒ですが、1500年続く伝統の内、1924年(大正13年)から白鷹のお酒が奉納されています。
では、それまでは。と、またしても現実的な事情を伺うことができました。
それまでは、伊勢神宮の中でお酒も自作されていたようです。ところが、1924年、酒税の制度ができて、お酒造りが免許制になったとか。そこで伊勢神宮での自作から酒蔵さんからの納入に変更となったとのことです。
当時の酒蔵の数は約3000。その中から御料酒として選ばれたのは凄いことですね。味、品質、価格多面的に優れたお酒ということなのでしょうね。
御料酒は昔は樽で納められていたようですが、今は一升瓶でお納めされています。年間の量は322本、御料理専用の最高品質の大吟醸とのことでした。
大吟醸にかけられた手間
蔵内に入るとまずはずらりとお米が並んでいます。
驚いたのは精米にかかる時間。田舎に置かれている精米器のイメージで、一瞬にして削られていくのかと思いきや、お米の世界は本当に繊細。削っては休め、削っては休めとして丁寧に精米するようです。
そのため、50%に削り取るには50時間、大吟醸でみる35%になるには100時間もかけて精米されているそうです。
お酒に利用されることで有名な山田錦と一般の稲の高さの違いを見せていただきました。
酒蔵巡りの中で山田錦が背が高いことは学んでいましたが、目の前で比較されると本当に大きい。
背が高いということは、倒れやすく、育てにくいらしいのですが、それでも手をかけて育ったお米が良いお酒になるんですね。
香りを嗅ぐだけでも蔵見学に来た価値あり
この蔵は近代的な蔵で麹の樽はホーローでできているそうです。
麹はこうじ菌の酵素で米のでんぷんをブドウ糖に変えて出来上がるもので、蒸したお米に種麹を加えて増殖させて、いるものと思います。
そして、今は仕込みの真っ最中。米、米麹、水を入れてお酒を育てていきますが、その18日目の状態だそうです。
この仕込みのおかげかはわかりませんが、蔵内は甘酒っぽい辛味のない香りような甘い香りが漂い続けています。
甘党にはお酒そのものよりも心惹かれる香りで、これだけで蔵見学の価値があると思いました。
仕込みを終えて熟成したもろみから新酒を搾っていく機械。感染防止を考えなくて良い時の蔵見学では、ここで搾りたての新酒を試飲できるサービスがあるそうです。早く再開する時代が来るといいですね。
酒絞り機のフロアには、伊勢神宮御料酒の専用庫がありました。
蔵の水路を見てみると宮水用の配管もありました。
しぼりたて新酒を愉しむ会のお酒とお料理
蔵見学を終えて、元の宮水ホールに戻ると、座席には松花堂弁当が置かれています。このお弁当は、白鷹禄水館の中にある、東京竹葉亭さんのもの。
しぼりたて新酒はカラフェで提供されていますが、1人あたり300mLもあります。アルコール度数が高くて19度もあるそうで、たっぷりのお水と一緒にいただきます。搾りたて新酒は、寝かせる前の状態ですので、結構、しっかり日本酒らしい味と香りがしています。
お弁当が美味しすぎてご飯が進み、最後にアテがなくなるのが少々困りましたが、天ぷらのしっぽやお塩まで美味しくて、新酒も全部いただき、ほろ酔いを超えたぐらいのしっかり酔いで会を終えます。
冷酒は、脳の反応が遅くなるので後から酔いますと説明を受けていた通り、しっかり酔って楽しい気分になります。
しぼりたて生原酒をお土産にも
そして、この会に参加した人だけに販売するしぼりたて生原酒を買って帰ることができます。封を開けていなければ、半年から1年、好みによっては2から3年寝かせてまろやかな風味となるのを待って楽しむ人もいるようです。
開封後は2週間以内にとのことでしたので、数日に分けて飲むこともできるとのことでしたので、1本購入しました。半年から1年後に飲んでみようと今から楽しみです。
宿泊は神戸ベイシェラトンで。
そして、この日マリオット修行を兼ねての温泉旅!神戸ベイシェラトンのクラブラウンジで追い酒をしてしまうのでした。
神戸ベイシェラトンについては別記事で詳しくご紹介していますので、この日のクラブラウンジカクテルタイムのオードブル写真と、ロビーの生花のみをご紹介。生花は同じ1月でもお正月仕様とは大きく変わっていました。
次の記事は、この新酒を愉しむ会で日本酒をたっぷり飲むということもあり、その前の備えとその後の酔いざましの素敵カフェをご紹介します。