大阪歴史博物館は、大阪城至近にある、巨大な10F建の博物館で、この博物館には大阪城訪問時など何度か訪問しています。
今回は、今回は『和菓子いとおかし』という大阪のお菓子にテーマを絞った企画展があり、無料の対談式セミナーがあるということで聴講してきました。
大阪歴史博物館の場所と概要
大阪歴史博物館の場所
大阪歴史博物館は、大阪城近く。駅では、大阪市営地下鉄谷町線・中央線の『谷町4丁目』から徒歩2分です。
大阪歴史博物館の展示概要
大阪歴史博物館は概要にはまとめられないほど大きな博物館で、10Fから7Fまでは常設展を実施しています。
常設展の展示物はともかく『巨大』な物が多く、上階から順に、古代難波の宮から始まり、中世・近世へと時代の変遷を巡れる構成となっています。
私が何度行っても面白いなと思うのは近世の街の様子でしょうか。八百屋三や魚屋さん・公衆電話ボックスなど実物大仕様で、リアルに街に溶け込めるようになっています。
大阪歴史博物館から見る大阪城
大阪歴史博物館を巡るもう一つの楽しみは10階から順に各エスカレーターの踊り場で大阪城を眺められること。特に暑い真夏はクーラーの聞いた館内から大阪城を最良の角度で愛でる優雅な鑑賞がありがたいです。
iPhoneカメラでさらっと撮っただけでこの距離感。高さ的にもちょうど良い場所ですので、特に10Fから9Fに降りる場所がおすすめです。
大阪歴史博物館企画展『和菓子いとおかし』
大阪歴史博物館の企画展『和菓子いとおかし』は、大阪歴史博物館の学芸員の方が、『難波津』(なにわづ)という単語をキーにネットサーフィンをされていた時に、大阪の老舗大店の和菓子屋さん『鶴屋八幡』さんの商品『難波津』に行き当たったことが始まり。歴史博物館と和菓子屋さんのコラボイベントとして、和菓子発展の主軸となった豊臣秀吉の肖像画から始まる歴史物の展示がなされています。(2022年9月4日まで)
ただ、貴重な資料が多いらしく、大阪歴史博物館常設展は写真撮影自由なのですが、この企画展は撮影一切不可ですので、会場でご覧ください。
個人的には、折角季節の美しさを表した生菓子の世界。歴史ある和菓子の食品サンプルでも置いてくれて撮影可能にした方が、和菓子の魅力を届けたい層に向けて役立つのでは??と思いましたが)。
対談『大阪と菓子のこれまでと今』
この企画展のきっかけとなった大阪歴史博物館の館長さんと、鶴屋八幡の社長さんが対談形式でのセミナーを実施されるとパンフにあったため2022年7月31日予約して伺いました。今後は8月13日に30分間の学芸員さんのスライドトークがあるようです(当日先着制)。
大阪と鶴屋八幡さんの菓子の歴史
和菓子はいつ始まったか……。ライトノベルなどでは平安を表した小説などでもお菓子らしい描写があるため、私はもうお菓子は奈良・平安時代からあったのでないかなどと思っていました。
が、意外にも歴史は新しく、豊臣秀吉が食に対する楽しみに取り組みから始まっています。1580年のお公家様の日記には饅頭が贈答品として出てくるようですが、おそらくそれは中国から伝わった果物文化『点心』(てんじん)に近いものだったのではとのこと。
その後の文献で、1692年 大阪の菓子屋として、心斎橋の饅頭屋さんが登場します。
それが、鶴屋八幡さんの前身の虎屋伊織さんの登場の10年前。
その後、虎屋伊織さんは大阪の観光案内本や双六にその権勢が描かれますが、当時のお店は間口23間(約42m)もあった大店だったそうです。
虎屋伊織さんを発展させたのは『商品切手』
さて、その虎屋伊織さん、発展の秘訣は商売の方法。
お饅頭の価格は、他店舗さんが1から2文の商品で、虎屋伊織さんのは5文。(お蕎麦の価格が16文の時代)
安さでもなく、売れた理由は、日本初の商品バウチャー『商品切手』だったとのこと。商品切手は、1シート10枚のクーポン綴りで、クーポン1枚につき饅頭1個を好きな時に引き換えできるもの。
この商品切手、結婚式や法事の時に配られて、当時は全家庭に1枚は最低でもあるとして『大阪で火事があれば虎屋が儲かる!(バウチャーが消失するから)』とまで言われていたそうです。
その商品切手、当時の資料にも判のつき方などのマニュアルがきちんとあって、偽造防止の対策までなされていたそうです。
この当時の商品切手は、今回の企画展の見どころだと思いますので、企画展に行かれる方は是非江戸時代の商才を感じて見てください。
その後、幕末までの160年続いた虎屋伊織さんも世情不安には勝てず……。
となりましたが、懇意にしていた財閥の支援もあって『鶴屋八幡』さんとして虎屋伊織さんのお客様ごとのお得意帳を引き継いで再び創業されました。
和菓子の種類
一口に和菓子と言いますが、大きなジャンルわけでも干菓子・羊羮・もなか・お汁粉・飴細工・生菓子といくつもありますが、鶴屋八幡さんの商品の種類は今現在、なんと2,000種ぐらいもあるそうです。お干菓子の木型も2,000丁。
特に季節・お得意様のお好みなどによって様々に作られる生菓子は究極のオーダーメイドと言って良い世界ですね。
なお、引き菓子の世界、私は恥ずかしながら、慶事の紅白饅頭しか知りませんでしたが、仏事用の緑と白のものもあるそうです。そして、大阪ではで黄色と白も。今後常識として覚えておこうと1つ学びました。
職人さん・仕入れ先を大切にする心
そのような種類も多い和菓子。菓子帳による引き継ぎ以上に大切なのは、『職人さん』の伝承です。職人さんの伝承は、見て盗め!という教え方は和菓子職人さんの世界でももう昔の話。
今は、丁寧に手取り足取り、技を教えて伝承しているようです。
そうなると今の若い年代の方も安心して和菓子の世界に入っていけるようで、和菓子の未来は明るいかも!と思います。
あと、大切にされているのは仕入先。
例えば貴重な良質の黒大豆や、契約栽培で手に入れる白大豆など。丹波の大納言は台風等で全く取れない年などもあるようですが、それでも継続して材料を納入されている仕入れ先さんは大切にされているとのこと。
鶴屋八幡さんでは戦時中に砂糖を譲ってくれた仕入先さんは何があっても取引を切らないという方針で仕入れを続けられていると言っておられました。こういう日本の良い話、心がほっこりします。
競争ばかりで疲れ果てる世の中より、こういう大切にしあう世の中になって欲しいですね。
和菓子の楽しみ方
和菓子の楽しみ方として大切にしたいのは、まず食器。
上生菓子をいただくのにパックからそのまま食べていませんか?そう問いかけられたとき、場内に笑いが…..。和菓子のセミナーに来られている(結構高齢な)方でも心あたりがあるんですね、と一安心はしましたが、きちんと綺麗な器と一緒に楽しむというのが大切だそうです。
あと、フォークで食べるのはNG。金属の味が伝わって美味しさに影響が出てしまいます。黒文字(くろもじ:和菓子につける爪楊枝のようなものの名前)でいただく時のコツは、まず濡らすこと。そうすると、和菓子がひっついて来ずに上手にいただけるそうです。
なお、和菓子の楽しみ方としては、その姿と味の他、美しくつけられた名前も楽しみの一つ。
和菓子の名前は、花の名前や古書に出てくる固有名詞の名前、地名などもあるようですが、綺麗だなと思ったのは『重ね色目』。
蘇芳や薄様など、季節感を色構成を美しくする着物の重ね色の組み合わせの名前が付けられた和菓子は、見た目も楽しませてくれること間違いなしだと思います。
日祝限定の和菓子セットをレストランで(〜2022年9月4日)
この企画展の開催中のみ、大阪歴史博物館1Fのレストランで、鶴屋八幡さんの和菓子セットがいただけます(数量限定)。
季節感を大切にする和菓子ですので、週によってメニューが変わります。
いただいた日は7月でしたので、『瀧しぶき』。
和菓子は、コーヒーまたは紅茶・抹茶のいずれかとセットの提供で1,000円です。
レストランの雰囲気は和菓子屋さんのカフェとはいえませんが、セミナーを受けて皆さん『和菓子の口』になったのでしょうね(私を含めて)。セミナーが終わって入ってくる方全員が和菓子セットをオーダーしていました。
和菓子提供の企画以外では、このレストランは1,000円未満のお手頃価格でお食事がいただけるようでした。現在、感染防止のため、大阪歴史博物館は再入場禁止・飲食一切禁止です。ゆったり気分で鑑賞するためには前後にレストラン休憩があっても良いですね。