UCCコーヒー博物館とは?
UCCコーヒー博物館は神戸市UCC上島珈琲本社のお隣にあるコーヒーカップ型の建物の博物館。その名の通り、コーヒーに関して、『起源』・『栽培』・『鑑定』・『焙煎』・『抽出』・『文化』をテーマにした展示を行っています。また、スペシャルティコーヒーを楽しめる喫茶室・焙煎体験教室・ミュージアムショップも併設されています。
UCCコーヒー博物館への行き方
UCCコーヒー博物館は神戸三宮と神戸空港の間にある人工島『ポートアイランド』にあります。
ポートアイランドに行くには神戸三宮から『ポートライナー』に乗っていきます。完全自動制御で運転席の内ポートライナーでは先頭車両・先頭座席に乗ると港や神戸の景色をフロントいっぱいに見ながら進んでいける路線です。
ポートライナーに三宮から乗車しようとすると行き先は『神戸空港』・『北埠頭』2系統に分かれています。
途中、市民広場までの駅は両路線とも同じ停車駅に停車しますが、北埠頭行きは南公園方面にくるっと回って神戸三宮に戻るルートを取ります。
UCCコーヒー博物館は南公園にあるため、往路は『北埠頭行』に乗車し、南公園で下車。復路も往路乗った電車と同じ方向の電車に乗って三宮に帰るということになります。
途中の市民広場駅では線路が切り替えられて『神戸空港』行きと『南公園』方面への行き先制御を行っている様子も見ることができますので、鉄道系の好きなお子さまなどは先頭座席が空いていれば乗車することをおすすめします。
旅好き・飛行機好きの人もこの先に神戸空港があるのだなと想像だけは可能です。
南公園で改札を出てガラス窓を見るともうコーヒー博物館は見えていますので、建物の形だけ覚えていれば、迷うことはありません。
長期休業中の博物館に入場できるUCCコーヒーアカデミーの1DAYクラス
2022年2月・3月(4月以降再開未定)の入場方法
UCC上島珈琲が運営されているUCCコーヒーアカデミーは、神戸校・東京校・オンラインとあり、コーヒーの歴史や抽出物実習を行う12時間のベーシックコース・知識や技術を深めるプロフェッショナルコース24時間という本格コース以外にも1DAYのコースが設けられています。
その中で、2022年2月・3月は長期休業中の「博物館見学ツアー(テイスティング付)」という90分間2200円のコースに申し込みました。
このセミナーは、なんと超少人数(最大6名定員)で博物館を学芸員さんの解説を聞きながら貸切見学できて、テイスティング体験までできる博物館休業中の今しかできない体験です。しかもツアー開始前の30分間はツアー参加者以外誰もいない自由に博物館内の見学・写真撮影が可能というVIP気分が味わえる素敵なコースです。
休業が明けた通常時のUCCコーヒー博物館 営業情報
UCCコーヒー博物館は年単位長期で休業しており再開時期は未定ですが、感染対策が不要になった場合の通常期の営業情報は以下の通りです。
- 開館時間:10時から17時(入館は16時半まで)
- 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
- 入館料:大人300円/65歳以上150円/中学生以下無料(障がい者と介添人は証明書が必要で150円)
UCCコーヒー博物館展示室1・起源
コーヒーの起源はエチオピア
展示されているのはエチオピアのコーヒーセレモニーで利用する道具とコーヒーセレモニーの手順画像です。エチオピアはコーヒーとのつながりが神秘的なもので、上澄を飲み終わったコーヒーは裏返して、粉の形で占いが実施されています。
人生の始まりから、コーヒーの神秘は始まっており、赤ちゃんが産まれるとまずコーヒーで文様を書く習慣もあります。
プロポーズの時にはコーヒーを差し出し、「水のよう」という返事であれば水に流すという意味で『お断り』、「美味しいコーヒー」といわれると「承諾」の意になるといいます。
また、コーヒーを飲む『喫茶』(お茶を飲む)という言葉が、「結納」を表しています。日本でも地域によって『お茶を飲む』が『結納』を表す地域もあるとのことで、驚きました。
理にかなう『コーヒーには塩』
エチオピアでコーヒーにあわせているのは『塩』
このエチオピアでコーヒーと合わせるのは砂糖でもミルクでもなく、『塩』。
日本の習慣でいうと「え????」という感じですが、コーヒーに多く含まれている成分はカフェイン以外に『カリウム』もあります。
『カリウム』は塩の主成分である『ナトリウム』と合わせると中和される性質のある成分。そのため、大量にコーヒーを飲む習慣がある場合、『塩』の成分で中和させるのは理にかなっているといます。
日本でもコーヒーと塩の中和効果を利用
日本でもコーヒーを大量に摂取する必要のある学芸員さんやブレンダーさんなどが塩を摂取することがあるそうです。
逆にいうと、塩分取りすぎだと思った夕食の後など、コーヒーを摂取することで中和の効果を得られます。塩分の濃い食事の後はぜひコーヒーを。
UCCコーヒー博物館展示室2・栽培
コーヒーベルト
コーヒーベルトとは赤道を挟んで北緯・南緯25度の「暑い国」。ただし、コーヒーは暑すぎても育たないため、暑い地域の高地等が適しているようです。ハワイ・コナがコーヒー栽培に適している理由は、高地で雲が発生して直射日光が当たらないという利点からきています。
コーヒーの品種
日本で販売されているコーヒー、喫茶店で飲むコーヒーは産地表記はあるものの、品種表記はあまり見ていないような気がします。というのも日本で商業利用されているのは、ほぼほぼ『アラビカ種』だから。極々稀にこだわりの喫茶店では『ロブスタ種』を取り扱われているところはあり、非常に麦茶に近い香ばしい味わいをいただけるそうです。
コーヒーの木一本から採れるコーヒーの量
コーヒーの木から取れた状態のコーヒーの実は赤い「コーヒーチェリー」一本の木からは約3Kgのコーヒーチェリーが取れ、その実の中には1粒に付2つの生豆が500g取れます。それを焙煎すると400gに減少し、コーヒーカップで40杯分。ただ、『UCC品質』はより豆を厳選されて利用されるそうですので、最終的には20杯分ぐらいになります。
UCCコーヒー博物館展示室3・鑑定
コーヒー博物館では世界各地のコーヒー袋を多数展示していますが、このコーヒー袋だけ見ても品質に区分があるのがわかります。以下の写真のコーヒー袋はハワイ島のUCC農園のもの。サイドに書かれているチェックボックス欄が品質を表しています。XF・Fはグレードの高いNo1より更に高い品質。最上級のクオリティを表しています。
- XF・・・エクストラファンシー
- F・・・・ファンシー
- ♯1・・・ナンバー1
- PB・・・PeaBerry
PeaBerry(ピーベリー)って?
PeaBerryとはコーヒーチェリーの中に通常2粒ある豆が1粒しか入っていないもの。希少種として重宝されているそうです。
インターネットで調べた情報では全豆の中で3%から5%。他の豆が2つに分かれている平豆形状ではなく、コロコロとした丸い形状をしているのが特徴です。実際の味の違いは証明されていないようですが、コロコロと丸いことで焙煎が満遍なくできたり、1つの実に1つしかできないため栄養分を独占できたりすることで味が良くなる(気がする)ということで愛好家がいるものとなります。
日本向けは大粒のハイグレードコーヒー鑑定
展示されているのはブラジルのコーヒー鑑定の様子。机の上には、欠点豆の様子や、粒の大きさの違うグレード1とグレード2の豆が置かれています。
鑑定1工程目:スクリーンチェック
コーヒーの生豆の大きさはテーブルの左上のふるいにかけて判定されます。この大きさの判定をスクリーンチェックといいます。
黒いシートの上がブラジルサントスNo.2のグレード。緑のシートの上がブラジルサントスNo.1のグレードです.ブラジルサントスNo.1ほどの大きな粒のグレードの高い豆はほぼ出荷先は『日本』となるそうです。日本人は見た目も含めた品質へのこだわりが強いからですね。
2工程目:グレーティング
グレーティングでは、見本の生豆の欠点数を調べます。発酵豆や、黒豆・未成熟豆を数えます。
3工程目:焙煎
焙煎を行ってみて、豆の膨らみ具合や焙煎にムラが生じないかなどを鑑定します。
4工程目:テイスティング
コーヒー鑑定士が焙煎後のコーヒーの味を確認します。国や地域により好みのコーヒーには違いがあり、例えば、「カルキ臭いコーヒー」は日本向け出荷では嫌われますが、ハンガリーでは好まれます。そのため、良い悪い以外の味の違いもこちらで鑑定されることとなります。
UCCコーヒー博物館展示室4.焙煎
焙煎については王子公園にあるRencaさんの焙煎体験記でも触れていますが、生豆は焙煎することで味や香ばしさが出ます。
焙煎の深さ(時間の長さ)によって、味は大きく変わります。UCCコーヒー博物館では壁面にライトローストからイタリアンローストまで焙煎の深さ別のコーヒー豆の色が並べられていて見ることができます。また、この空間ではコーヒー豆が焙煎の過程ではぜる音も流れています。
【浅煎り】ライトローストとシナモンロースト
日本ではまず、ライトロースト・シナモンローストレベルでの浅い状態でのコーヒーが販売されているのを見ることがありません。この浅さは宗教的に炭化されたものを飲食することを禁じる戒律のあるアラビアなどで採用されている超浅煎りの状態となります。
焙煎の過程ではコーヒー豆は2回はぜますが、その1回目(1ハぜ:イチハゼ)のはぜる前からはぜはじめの状態です。
【中煎り】ミディアムロースト・ハイロースト
ミディアムローストからは1ハゼの終わりの頃となります。
展示写真を見てもわかるように、ミディアムローストよりハイローストは、焙煎が深くなります(長時間焙煎となります)。浅い段階では酸味が濃くなり、焙煎が深くなるほど酸味が薄く、苦味が出ます。
昨今は浅めの酸味が強いコーヒーが流行りのようです。果実のような酸味をいかに出すかというのがテーマともなっています。
ミディアムローストはアメリカンコーヒーなどに活用され、ハイローストは一般的なコーヒーとして提供されているものです。
【中深煎り】シティーロースト・フルシティーロースト
1ハゼを終えて焙煎は深くなっていきます。シティーローストは、一般のコーヒー以外にもカプチーノやアルコール入りコーヒーに向いています。
フルシティーローストまで来ると苦味を活かして、アイスコーヒーや水出し、エスプレッソにも適しています。
【深煎り】フレンチローストとイタリアンロースト
コーヒー豆が2回はぜた2ハゼを終えるとかなり深煎りのコーヒーとなります。
フレンチローストは黒味が強くなるため、煮詰めるトルココーヒーやカフェオレに適しています。
最終段階となるのはイタリアンロースト。焦げの一歩手前の段階です。カフェジョーニョというブラジルの黒くて砂糖をたっぷり入れた甘いコーヒーに向いたものとなります。
UCCコーヒー博物館展示室5・抽出
ミルでの豆の挽き方と抽出方法の関係
コーヒー豆は焙煎後、ミルで挽いて、その後抽出工程に入ります。抽出の方法によって適する豆の挽き方もあり、カフェプレスやパーコレーターでは粗挽きで長めの抽出時間、エスプレッソでは超細引きとなって短時間で抽出するなど組み合わせを理解することでコーヒーが美味しく淹れられます。
また、コーヒーの抽出機器の種類によって異なる抽出方法も展示場では図示されていました。
全自動コーヒーメーカーはこのミル挽きの工程と抽出の工程を一緒になってくれているということですね。
王子公園駅のRencaさんでも焙煎体験時に伺いましたが、最近は自宅時間が多くなったためコーヒーの淹れ方にこだわる方が多いようですね。
ご自宅での珈琲を美味しく淹れるということについてのムック本なども出ているようですね。
UCCコーヒー博物館展示室6・文化
文化コーナーにはマイセンやウェッジウッドなどコーヒーカップなどが展示されています。
マイセンのは日本やアジアの文化を尊重されたデザインのものも多数出ているようで、写真右のコーヒーカップとお皿の青い部分は、日本の図柄、青海波を取り入れられているそうです。
後、コーヒーには直接関係しませんが、ワイルドストロベリーの図柄で有名なウェッジウッド家の家系に『進化論』を書いたダーウィンさんが連なるとのこと。ウェッジウッドの図柄に自然植物のものが多いのも家系の好みでしょうか。
UCCコーヒー博物館でのテイスティング体験
チョコレートにあうコーヒーはどこのもの?
テイスティング体験は月によってテーマが変わるようですが、2022年2月のテーマはチョコレートにあうコーヒー。
チョコレート好きとしては嬉しいテーマです。
テイスティングセットをみると『コロンビア』というのが、チョコレートにあうということですね。
そして、あえて後ろ向きにラベルを隠してあったものの産地は?
『キリマンジャロ』でした。
今回はただの試飲ではなくテイスティング体験ですので、お湯を入れてしばらくおいた後、コーヒーをスプーンで同じ回数・同じ強さで混ぜて上澄みを吸い込むようにいただき、味の違いも感じます。
食品とドリンクのマリアージュ(組み合わせ)の鉄則は、強いものには強いもの。チョコレートはかなり強い味ですので、もちろん深煎りの強いものコロンビアがあうのですが。中煎り等少しコーヒー側を和らげることによって、チョコレートの「ミルク」部分が引き立つという合わせ方もあることを学びました。
また、この日の参加者は全員コーヒーは酸味よりも苦味の深煎り派。コーヒーの苦味を引き立てたい場合は上部が底よりも大きくなっているラッパ型のカップよりも円柱上にまっすぐな形状のカップの方が人は苦味を感じるということも教えていただきました。
最終教えていただいた結論としては『美味しい』コーヒーを味わうために、最も必要なのは『自分の好み』を知ること。
深煎り派は、おうちのカップも円柱型にしたりして自分好みに合わせて行くことで美味しいコーヒーを楽しむことができるのです。