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ヨドコウ迎賓館 訪問記 見どころ・楽しみ方は?ライト建築の特長を見る  雛人形展期間中は和室撮影不可(2023年2月情報:兵庫県芦屋市)

本記事は甘党女性の酒蔵巡り灘五郷編の番外でもあります。

というのも、現在は淀川製鋼所さんが保有している重要文化財『ヨドコウ迎賓館』の大元は、灘五郷の酒蔵の一つである櫻正宗の八代目が別邸として建造されたもの。

帝国ホテルの設計者として有名な建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライト氏が携わり、弟子である遠藤 新氏と南 信(みなみ まこと)氏の手によって建設されました。

ヨドコウ迎賓館 見どころ・楽しみ方

ライト氏の設計では唯一、和の設えを融合した重要文化財です。

この迎賓館の見どころはなんといっても、建物の内外につながる共通性。

「あ、この模様あそこにもあったね。」

「この内装の装飾と外観のあの模様実はパターン似ていない?」

建築に詳しい方には他の見どころも多々あるのでしょうが、建築技術に詳しくない人も、統一感を感じさせる手法を発見しながら楽しむのも一興でしょう。

ヨドコウ迎賓館は芦屋の山の手に

ヨドコウ迎賓館は、阪急芦屋川駅から徒歩6分。400mなのですが、運動不足の身には、体感往路15分復路5分に感じる坂の中腹にあります。

自然と融合することが特長のライト氏の建築。道中から外観と自然の調和を見るところから、ヨドコウ迎賓館見学はすでに始まっています。氏の表現では『有機的建築』とのこと。

この写真の中央木々に囲まれたベージュ系の建築物がヨドコウ迎賓館です。この写真の撮影地はすでに道を半分ぐらい登ったところなんですが、歩くと思うと遥か遠くに見えません?(と、感じる方は私と同じ運動不足かも)

実は、私はJR芦屋駅前にある炭火焼き&ワイン『いわい』を訪ねた後の見学だったため、バスで阪急芦屋川駅より少し山を登ったこの写真の場所で降りてほんの少し歩いただけなのですが。その状態で急斜面に心折れそうになってたりしました…。近すぎてタクシーに乗せていただくのは忍びないと思ったのですが、最後の数100メートル、タクシーだったら入り口前まで行けたのにと頭がよぎったりしました。

帰りの下りは、芦屋山の手という素晴らしい場所にお住まいと思われる方々の超高級外車が次々通る様子を眺めながらの楽しい道のりだったのですが。

道中から見たヨドコウ迎賓館の外観

ヨドコウ迎賓館見学は予約制

2023年2月現在、ヨドコウ迎賓館見学は完全予約制です。

見学可能な時間枠を予約して、その時間内は自由見学となっています。

予約はヨドコウ迎賓館の公式サイトから

ヨドコウ迎賓館見学

外観とエントランス

ヨドコウ迎賓館の門扉に記載がある通り、入場料は500円(小学生〜高校生200円)です。中で見学した際に知ったエピソードによると、ヨドコウ迎賓館は昭和49年国の重要文化財に指定されていて、それを見学できるようにする事業は決して儲かりませんが、『文化に貢献する』という企業姿勢で運営されているとのことです。

お支払いは建物の中に入ってから玄関で。

なお、建物の中にお手洗いはないため、入場前に門から玄関の間にあるお手洗いを利用します。

ヨドコウ迎賓館門

外観 門付近

外観で目を引くのは、大きな煙突と丁寧に装飾された外壁。外壁や内装に幾何学模様でパターンを統一して、全体に調和を持たせるのがライト氏の建物の特長です。

外観 エントランス付近の煙突

ピロティの写真の右側が玄関となっていて、左は壁が開放されています。

外観 ピロティ

車寄せの内側から開放された部分を見ると、額縁のような役割の外壁に囲まれて、芦屋の高台から見る景観が1枚の絵のように見えます。

(晴天の日中は、遠くは紀伊半島・そして海、近くには芦屋の市街地が見える場所となっています。)111111

車寄せから見る景色

さて、反対方向玄関付近に目を移すと。

かなり小さめの玄関の扉と水を流して溜めておけるようになっている『壁泉』(へきせん)が。

玄関と壁泉

玄関が非常に小さいのは、茶室のにじり口をイメージされています。

建物内部は、4階建ですが、山の斜面、尾根に沿って建てられているため、内部の段差があることにより実際は2階建が連なっている構造となっています。

出典:ヨドコウ迎賓館 パンフレット フロア構成記載

1F玄関

さて、1F玄関を入った時の印象は『あえての暗め』。

1F玄関
矢印は行燈のようにも見える装飾

差し込む仄かな光が行燈のような役割に見える雰囲気から、階段を登るに連れて明るくなっていきます。

階段

豪邸はこういった家の中の物語性が面白いですね。

2F 応接室

2Fに広がるのは応接室です。1Fにもあった銅板の幾何学模様が応接室にも取り入れられているのがわかると思います。

なお、休日等混み合っている日は予約時間枠最初にほぼ全員が2Fを見学しますので、少し別のところを見学してから2Fに戻るなどした方が、じっくり楽しめます。

2F応接室の入り口

この応接室の五角形のような応接セットは、雰囲気にあわせて作られただけのものですので、イメージを楽しむものですが、作り付けの家具の部分は、家と統一感をもたらす作りになっているため、その雰囲気も楽しめます。

面白いのは天井付近の小窓。小さな扉がついた意匠で、規則性があって。この応接室だけではなく、和室や、寝室等にも共通のものを取り付けていることで建物の一体感を高めています。また、外壁からつながる石造りの装飾も一体感が出ています。

応接室

そして、この応接間に入って入り口側を振り返ると大きな暖炉。デザインはエントランスにあった壁泉と通じるものがあります。つまり、暖炉でありながら、どこか水を思い起こさせるものなのだと思います。そして、外観で見た大きな煙突はこの暖炉と繋がっています。

暖炉

3F和室は雛人形展開催中(撮影不可)

3Fのメインとなる和室は、雛人形展開催のため、撮影は不可。復活した時の見どころとして、和室ですが、幾何学模様を取り入れた窓枠など、当時としては大いに先進的なデザインがされていて、ライト氏の洋風建築に馴染む作りとなっています。

そういった建築の見学という面では、一部残念なこともありますが、この雛人形展がまた素晴らしいものです。京都の老舗人形店『丸平大木人形店』さんに依頼されて作られたものです。

和室に中央から入って、両側に飾られているのですが、片側には段飾りの雛人形一式に加えて、『花嫁人形』と言われる人形と嫁入り調度品が。

もう片側が、和風の人形にもかかわらず、洋風や中華風といったどこか海外の香りがしそうな人形の数々。下の写真パンフレットの右下、立派な様相の男性の姿も。これは『花観人形』といわれるもので、お花見の宴を模したもの。ご立派な様相の男性は明治天皇のお姿だとか。

1,900年(明治33年)当時は、雛人形・花嫁人形・花観人形をセットで飾るということが、流行ったとのことでした。灘の酒造家の贅を尽くした文化の一端を感じることができますね。

出典:ヨドコウ迎賓館 雛人形パンフレット

3F 元家族寝室と連なる婦人部屋

和室を抜けると家族寝室。置かれているのは、寝室家具ではなく立派な机。これは、元の家に置かれていた家具の復元です。

元家族寝室に置かれた机

そして隣には婦人部屋。和室となっています。

婦人部屋

この家族寝室から部屋の中にある階段を上がると隣の婦人部屋に繋がっていて、部屋間にある窓で2つの部屋間でコミュニケーションを取れるようになっているのですが。

婦人部屋との境目

なぜ、階段?そう思いませんか。

実は畳に座って過ごす婦人と、椅子に座ったり立ち上がることの多い家族寝室の旦那様がコミュニケーションを取る時に目線が合うようにと和室を高い位置に作るという配慮がされています。

婦人の気持ちになって正座して、家族寝室を見るとその利便性を体感することができます。

婦人部屋絡みた家族寝室

装飾だけではなくて、生活する空間ということを考えられた設計ですね。

なお、メインの和室は撮影不可ですが、婦人部屋の窓の部分に和室に施された幾何学紋様の装飾をみることができました。ライト建築の中で唯一の和室融合。その手法の一部をここでも見ることができますね。

婦人部屋の窓

3F廊下は自然と建物の調和を

3Fの和室の前から繋がる長い廊下には窓が沢山。お庭の自然との調和。また、様々なところで使われている統一された幾何学模様の装飾があることで、建物内の調和も図っています。

3F廊下

この廊下のさらに奥には、元々お子さまの寝室があったお部屋がありますが、現在は資料VTRが流れる部屋となっています。たくさん人がVTRを見ていらっしゃるので全景は写していませんが、やはりこのお部屋も統一の幾何学模様と、天井付近の装飾窓など、共通要素を見つけることができます。

子ども用寝室の窓

4F  食堂

4Fのインテリアは3Fと少し雰囲気の違う、少し教会風のもの。天窓も三角形に切り取られていて違う空気も取り入れられています。

食堂

こちらの暖炉も、どこか祭壇のような静謐な感じがします。

食堂の暖炉

4Fバルコニー 出て振り返った場所が記念撮影スポット

4Fはバルコニーがあり、外から見ていた大きな煙突を近くで見ることができます。

このバルコニーは下足スリッパに履き替えて外にでることができるようになっていますが、記念撮影をする場合は、一旦、外に出て振り返った入り口付近の建物を入れて記念撮影されている方が多くいました。

バルコニーから見た煙突❶
バルコニーから見た煙突❷

バルコニー絡みた建物の入り口(記念撮影スポット)

全体を見て、車寄せがピロティ型だったり、石造りの装飾が多かったりと、建物全体の強度は?と思われるかもしれません。

が、ここ芦屋にこの建造物がこの形で残っている。というのは、阪神淡路大震災を乗り切った建物だということ。美しく、かつ強靭。建築の素晴らしさを感じることができる見学となりました。

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