神戸市のふるさと納税の中で、お食事券を探していたところ、酒蔵巡りをするには面白そうなチケットを発見して訪問してきました。
料理の種類によって、65,000円・140,000円・200,000円と3段階(いずれもふるさと納税額)あります。ふるさと納税謝礼でのペアお食事付ですので、ざっくりおおよそ実質1人あたりの価格は1万円・2万円・3万円の実質イメージでしょうか。
私は65,000円のコースに訪問したのですが、日本酒の味わい方を『理論』で教えてくださる素晴らしいプライベートセミナーに聞き入り、そのあとは理論を体感するべく美味しい懐石料理に日本酒を合わせていただく。
試飲レベルではなく、今日はお酒もお料理も堪能した!と思う内容に大満足の体験内容をご紹介します。(これだけ上質なものを食べて飲んで追加料金なしということにも感動できます!)
ふるさと納税申し込み後の予約は?
ふるさと納税に楽天ふるさと納税から申し込みを行うと、自宅にチケットと予約用電話番号が届きます。
セミナー日程調整は、全て個別で電話調整となります。昼食に合わせて行うか、夕食に合わせて行うか、私は夕食に合わせましたので開始時間は17時半です。
お料理に合わせるお酒たっぷりいただけるので、楽しくいただくには翌日お休みの日がおすすめです。(ザルと言われるような方はともかくとして。一般的なお酒の強さの方へのアドバイスです。)
神戸酒心館の場所は灘五郷の西から2番目『御影郷』
神戸酒心館の場所は、日本有数の酒処『灘五郷』の三宮に近い西側から2番目の阪神電鉄普通の停車駅『石屋川』駅から徒歩9分です。(駅の看板では8分と書かれていましたが)
大変科学的に理解が深まる日本酒セミナー
酒心館さんといえば、ノーベル賞の晩餐会で出される日本酒『福寿』が有名ですが、それも納得。まずは、その美味しさを頭で理解するセミナーを30分間、プライベートで受講できます。
講師の方の様々なお話は酒心館チャネルでも色々学べますので、合わせて見てみてください。
セミナーは『顕微鏡』の世界の解説から
レーウェンフック氏(1632年〜1723年)オランダのレンズ愛好家?顕微鏡観察家のお話からセミナーは始まります。
お酒に関係する事柄としては1,680年レーウェンフック氏が発見したのは、『酵母』。ビールの澱から発見されました。
この酵母ですが、増える時は『自分と同じものを際限なく作る』という点が非常に重要となります。毎回酵母が変化していては、味を調整することはできないですもんね。
その後様々な科学者が課題に取り組むこと200年。1,800年代には、低温殺菌や酵母製品というものが科学的に解明されていきます。
ワインは作り始められてから8,000年。それまでなんだかよくわからず出来上がっていたお酒を、理論で美味しく調整して作り出す歴史が始まったのです。
人間の味覚を分析すると嗅覚の影響が大きい
味覚をどこで感じているかと聞かれると、舌だと思っていますが、実は人間の味覚の8割から9割は嗅覚から。
驚いたことに『レモン』と『ライム』は味覚センサーで測ると同じ味で、香りだけが異なるとのことです。
そして、香りには、鼻の前から嗅ぐ『オルソネーザル』と、食べたものの残り香を嗅ぐ『レトロネーザル』の2種類があり、このレトロネーザルを感じることができるのは人間のみ。犬は高い嗅覚を持ちますが、あくまでも鼻から直接嗅ぐことしかできないのです。
そして、レトロネーザルこそが、美食を味わう重要要素。美食という概念は人間の高度な機能を活用して生まれるものなのです。
旨味要素が活きる日本酒の世界
香り部分を除いた味。
欧米では、味覚は甘味・苦味・酸味・塩味の4種類だと考えられてきましたが、日本酒を作り出した日本には当初より5つ目の味『旨味』という概念がありました。
ワインは主として、アロマと甘味・酸味などで成り立ちますが、日本酒の主となる美味しさは『旨味』。そして、アロマと酸味はほのかです。
ワインには驚くほど合わないものが日本酒なら
旨味を主軸としてアロマが薄い日本酒は、ワインが合わないものにも合わせることができます。
講師の方はソムリエでもあるのですが、ワインが合わないものの代表として挙げられたのは、『生牡蠣』。
私は牡蠣が苦手なので、いただいたことはありませんが、生牡蠣と赤ワインを合わせるととんでもないほど美味しくないようです。
ところが、赤ワインの産地で有名なボルドーでは、牡蠣と赤ワインをたらふくいただくという文化があったようで、その理由を知ると。
その地域では牡蠣を食べたあと、必ずチョリソー(辛いソーセージ)を食べ、赤ワインを飲む、そして赤ワインの後にはパンを食べて、牡蠣に戻るというループで楽しまれていたようです。
実は決して口の中で赤ワインと生牡蠣を出会わせないとルールを守って楽しんでいたようですね。
こういった生牡蠣に加えて、海藻や魚卵、また卵黄を使ったものとワインは合わないらしいのですが、そんな時には、日本酒を合わせるというのが美味しく料理とお酒の組み合わせを考えるコツなのだとか。
お料理との合わせ方は補助か同調
お料理にどんなお酒を合わせるかの考え方をもう一つ。
お料理に合わせるお酒の役割は『補助』か『同調』。
補助というのは、お料理にハーブが足りない時にハーブのお酒を足すといったもの。
同調というのは、赤いもの(お肉)には赤ワイン・白いもの(バター味など)には白ワインという似たものを合わせていくという考え方です。
また、上級の合わせ方では酒器によって液体の流れを調整したりする考え方もあるそうですが、それだけでも語ると1時間ぐらいかかるらしいのですが、いつか学んでみたいですね。
さかばやし個室で味わう懐石と日本酒5種
さて、美味しさには理由があるということがわかった(自分では理解しきれないところがあっても理由を考えて選んでくれているということがわかった)後にはいよいよ実食です。
お食事は酒心館さんに併設されている懐石料理屋 『さかばやし』で。
こちらは以前にも昼食にも伺ったことがあってお料理が美味しいことはすでに体験済みのお店。(以前の2022年4月の訪問記はこちら)
まずは講師の方からそれぞれの日本酒の解説をいただいた後、お料理に合わせてお酒を注いでくれます。
では、お料理に合わせて一本づつご紹介します。お酒のボトルは下げられたのでボトル写真は上のものをご参照ください
先付:蟹味噌豆腐×福寿純米酒 『エコゼロ』
蟹味噌豆腐に合わせるのは、軽やかでキリッとした辛口のエコゼロ。エコゼロという名前は、カーボンオフセットで作られたお酒で、きちんと水力発電由来の電力で作られているそうです。
前菜:旬菜盛り合わせ×福寿 純米大吟醸
色々な味をもたらす旬菜盛り合わせには、華やかな香りと甘味をもつエレガントなお酒が合うとのことで、合わせるのは純米大吟醸です。
吸物:清汁仕立て蟹真丈(×残りの純米大吟醸など)
お吸い物自体には、新たに合わせるお酒はありませんが、エコゼロや純米大吟醸の残った分を合わせても良いとのこと。実はスープ系の飲み物に合わせることができるのも日本酒の特徴なのだとか。出汁味も邪魔をしないというところが素敵です。
造り:旬魚の2種盛り×壱 生酛純米
お造りに合わせるのは『福寿』でないブランドの『壱』ブランド。
壱の名前には深い由来があって、1995年の阪神淡路大震災で酒蔵が壊滅的な影響を受けた際にゼロから始めるのではなく、壱から始めるという意味で名付けられたお酒だとのことです。
実は、私が酒心館さんを複数回訪れているのはもちろん、お酒とお料理が美味しいことが大きいですが、初回に訪れたセミナーの時に、震災から復興して、ノーベル賞晩餐会のお酒を提供するまで、復興していくまでのお話を聞いて感動したから、という理由で。訪れる度に『頑張ろう』という気持ちをいただける酒蔵だからです。このブログの中で甘党女性の酒蔵巡りとして、及ばずながらお酒は文化という内容を取り入れているのも、こちらの酒蔵で聞いたセミナーの文化を守っていくというお話が原点となっています(少し私事ですが)。
このお酒は生酛造りで、自然由来の発酵手法を用いていますが、こちらで生酛造りを行なっているのはタンク3本のみとのこと。希少な生酛造りです。
なお、お醤油入れに入っている薄い色のお醤油は入り酒。日本酒に梅干しを漬け込んだお醤油の始まりのものとなります。
煮物:鯛と蕪の酒粕煮×FUKUJU KEG DRAFT純米にごり
鯛と蕪の酒粕煮に合わせるお酒。これは酒蔵でいただくお酒の醍醐味かと思います。発酵タンクの中からそのまま掬い取ったような生のお酒。発酵中のもろみの弾け具合を感じるフレッシュなしぼりたてのお酒です。
こちらだけは、グラスに注ぎ入れるのではなく、フレッシュな状態の器のまま提供されます。
酢物:鰤南蛮漬け×福寿 純米吟醸
ワインの合わない食事としてここでもう一つ教えていただいたのは『酢の物』です。
ビネガーは尖った発酵物。せっかくのワインをトゲが邪魔してしまう組み合わせとなってしまう組み合わせなのだとか。
ところが、そんな甘酢にもしっかり会うのが純米吟醸。南蛮漬けと組み合わせて口内調味を味わうこともできます。
最後の一杯純米吟醸は、ノーベル賞晩餐会で出されているお酒。福寿の純米吟醸です。
こしひかりと赤だし・梅ちりめん・デザート
これでお酒は終了。あとはしっかりご飯とデザートをいただいて、冷ましてから帰路に着きます。
お土産
ここまででもう、充分ありがたいコースですが、最後にお土産もくださいました。ペア参加のため1人一本づつの純米酒300mlです。帰ってからもお楽しみが続きますね。
ふるさと納税返礼品のお話はここまで、次の項目は、別途購買したものとなります。
購入品:関西学院大学の学生さんとのコラボ酒
さて、お酒文化ですが、若い世代に引き継いでいくためZ世代向けのお酒が500本限定で販売されていましたので購入しました。
Z世代ではないですが、子どもに近い味覚である自覚があるため絶対に美味しいと思うはず。
置いている日本酒の中で最も軽い、新しい世代に向けたお酒は693円とお値段もお手頃。訪れられた方は本数限定ですのでお早めに手に入れられると良いと思います(Z世代の方の一本を奪ってしまってすみません….)。