「神戸 北野異人館と聞いて思い浮かべる邸宅はどれですか?」
そう聞かれて『風見鶏の館!』と多くの方が答えるとすると、意図して目立つように建てられた戦略が成功しているということ。(うろこの家とどちらが有名なのかは不明ですが。)
そのことを45分かけて、じっくり理解できるツアーが風見鶏の館で行われています。
風見鶏の館に行くには?
風見鶏の館は北野異人館街の中にあります。JR・阪急・阪神のターミナル駅である三宮から徒歩で坂道を頑張って上がるもよし、新神戸駅から下るもよしの立地。体力に自信のない方は三宮からループバスが出ています(ループバスの7番三宮北行き乗車・10番北野異人館下車 大人260円)
風見鶏の館 探検ツアーに参加するには?
風見鶏の館では毎月第三土曜日(7・8月を除く)に探検ツアー、毎月第二日曜日(5・11月を除く)に執事ツアーという使用人を含む生活ぶりを紹介するツアー、第一土曜日(10・1月を除く)にはアートツアーという3大ツアーが実施されています。
公式のHPで電話番号を確認 の上、電話予約してから伺います。
3大ツアーの参加料は入館料と別に500円。
この内容です500円はありがたい!と思う内容でしたので、機会があればぜひ。
ツアーに参加できず訪問するときは?中の丁寧な案内札から理解
ツアーの場合、体系的に風見鶏の館を理解できますが、ツアーで案内されない内容や日程的にツアー参加できない場合は館内の案内札の内容で理解しながら見学すると気づかなかったことに気付かされると思います。
ワイヤーで高さを調節するシャンデリア
例えば、1Fの居間に吊るされたこのシャンデリア。普通に眺めているとピンクのシャンデリアってポップな意匠かなという雰囲気だけでみますが、説明を読むと、サイド部分にあるワイヤーはシャンデリアの高さを調節するものということがわかり、当時のライトの明るさの限界では、本などを読むには不十分で、ライトを手元に下ろして利用していたという生活をより具体的に思い描くことができます。
風見鶏の館の建築様式を知る ツアーの始まりはお庭から
建築主の特徴を学ぶ
風見鶏の館は1909年(明治42年)、ドイツ人貿易商のトーマス氏が自邸として建てたお屋敷です。
このトーマス氏が貿易商であったことがポイント!
この館、高台にあり、屋根の上には風見鶏、そして門の雰囲気は非常に開放的。外から中が覗けるような仕様になっています。
このような作りとなったのは、貿易商のトーマス氏が自邸に迎賓館として役割を持たせたからという意図を持って建てられています。
建築家から見ると???な様式 4つの建築様式を採用
風見鶏の館はレンガ造りではなく、木造住宅。長年、建築家によってどちらの様式が議論がされていましたが、少し悲しいことに阪神淡路大震災時の亀裂によって内部はレンガ造りではなくレンガ貼りであることが判明したということです。
そのメインのレンガ貼りの部分はイギリス風建築。レンガの積み方にはフランス積み(長いレンガと短いレンガを交互に積む)とイギリス積み(積む段によって長いレンガの段と短いレンガの段)というものがあってここはイギリス積みとのことです。
その1段上の白と茶色の部分。これはハーフティンバー方式というアルプス様式。ティンバーは丸太を指しています。
さらに上の屋根の三角形部分はネオゴシック様式(教会のデザインを家庭に取り込んだような様式)。
最後に、レンガ造りの下の半地下、石積み部分は、古典様式。ギリシャ・ローマ時代の様式であるようです。
こういった、時代も異なる4つの建築様式を一つの建築物に取り入れるのは建築家にすると不思議???なことらしいのですが、トーマス氏は『遠い異国の地でも、訪れた人にドイツをともかく思い起こさせるようなものを』という思いを込めて作られたとのことです。
(通常非公開エリア)風見鶏の館の半地下見学
この風見鶏の館の半地下にツアーでは入れます(通常非公開)。雰囲気はツアーに参加した方限定のお楽しみですが。
この部屋が半地下となっているのは、ここが元、ため池だったからだそう。
外国人と日本人が混在して住むことを許された雑居地である異人館区域。外国人邸宅は300から500平米の大きな邸宅が多く、当時敷地が空いておあらず溜池のあったところに建築をされました。
また、この土地のお隣は北野天満神社(1180年平清盛が建立 北野の名前の由来となった神社)。トーマス氏は神社の隣の立地を非常に喜ばれたそう。
というのもGoogleMapなどもちろんない時代。住宅街の中で家の場所を説明するのは非常に大変。そんなときに説明しやすい立地だったからですね。
(通常非公開エリア)風見鶏の真下の天井裏のお部屋見学
使用人階段を登れる!
実はツアーの中で私が最もテンションが上がったのは、使用人階段を登れたことかなと思います。
お屋敷のご主人家庭とは全く別の動線を描く使用人の世界。気分は完全に『ダウントンアビー』のメイドです!
天井裏のお部屋
使用人階段を登るとそこは天井裏の世界。利用用途は明らかではないようですが、館長さんの談によると、ヨーロッパの方は外に洗濯物を干されないため、洗濯の物干し等に利用されていた可能性もあるかなとのこと。
そして、この屋根裏の奥、鍵がかかる別部屋があります。
剥き出しの屋根裏ではなくて、綺麗に装飾されたお部屋。窓からは神戸の景色が見えます。こちらも用途不明ですが、このお部屋のライト(赤丸)の1が、風見鶏の真下に位置しています。
風見鶏には、魔除けの意味もあるようですので、真下に立つとパワースポットになるかも!?というのは館長さんのセールストークなのか!?と思いつつ、ツアー参加者はみんな一度真下に当たるライトの下に立ってみていました。(真偽のほどはわかりません)
非公開エリアの空気を感じられるのはツアーの醍醐味。ここに入れて500円は安い!と思う雰囲気があります。
(有料通常公開エリア)1F・2F公開居住空間
ツアー終盤は、館内の通常公開エリアへ。ツアーでは通常公開エリアはさらっと巡るため、ツアー前後にじっくり自由見学をするのがおすすめです。
ホール式と廊下式
異人館の様式は大きく『ホール式』というホールを中心に各部屋を行き来できるような方式と『廊下式』という各部屋を廊下で行き来する方式に別れているようで、風見鶏の館はホール式です。
1F部分の役割
館長さんの説明がシミュレーション的でリアリティがあったのですが、このお家に招かれると、まずはホールから応接室に案内され、そして居間で語らっている間に夕食時間となって食堂に案内されるという流れ。
各部屋は、部屋の天井や、シャンデリアも全て異なるインテリアデザインです。それは、1Fがお客様を楽しませる迎賓館要素の強いフロアだから。案内されるお部屋の扉を開ける度、『どんなお部屋なんだろう』と思わせる楽しみをもたらしています。
そして、最後に案内される食堂は『お城』をイメージさせるもの。天井に吊るされたシャンデリアは『クラウン(王冠)』のイメージです。
ストルツェンフェルス城がモデルか
食堂のモデルとなったお城ですが、ライン川のほとりにあるストルツェンフェルス城のようです。(後程の研究での推測)
ヨーロッパのお城の城壁にある飾り部分はお城ごとに異なるため、その部分で特徴を判断できるとのことです。
2F部分の役割
お部屋ごとに特徴の多い1Fと比較して2F部分は照明も全て同じ、天井もシンプルなものになっています。食堂と比較してシンプルな朝食の間。2Fは客用寝室を除いては家族のプライベート空間として活用されていたようです。
しかも、お客様がいない時には、温められる部屋は朝食の間のみ。ご家族は朝食の間を居間として日常使いされていたというエピソードがあるそうです。
客用寝室はカーテンと壁紙がお揃い
客用寝室はカーテンと壁がお揃いです。ツアーではこのお部屋は案内されませんが、館長さん談によると桜の季節が最高だとのこと。窓の外が一面桜になって窓が額縁のような役割を果たすようで、そのときだけはカーテンも取り外して桜を見せる仕様になるとか。
トーマス家の経緯はツアー参加時のお楽しみに
ここに書いたこと以外でもここのお住まいになっていたトーマス家ご一家のお話や第一次世界大戦との関係。そして風見鶏の館の改装の経緯など、実際にツアーに参加してみると興味深いことが沢山ありました。
異人館は個人の邸宅だというのに奥が深い!そう思わせる訪問でした。